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顎変形症と睡眠時無呼吸症候群
 睡眠時無呼吸症候群(sleepapneasyndrome:SAS)は睡眠時に呼吸が停止してしまう疾患で、呼吸運動そのものが停止する中枢性睡眠時無呼吸症候群(centralsleepapneasyndrome:CSAS)と、気道の閉塞により呼吸が停止する閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstruCtivesleepapneasyndrome:OSAS)に分類されます。
 OSASでは入眠して気道周囲の筋が弛緩すると気道が閉塞し呼吸が停止することで、酸素分圧低下し、覚醒反応が起こり呼吸が再開されますが、入眠すると再び呼吸が停止してしまいます。
 閉鎖性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)では「低酸素血症による動脈硬化」、「代償性の心抽出量増大による高血圧」、「胸腔内陰圧の増大による肺高血圧」、「睡眠不足によるストレスホルモンや免疫因子増大による耐糖能低下」、「内臓脂肪増加」など様々な要因により生活習慣病が引き起こされます。
 閉鎖性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)患者の統計的調査から12年間に30%以上の患者で狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患がみられ,このうち15〜20%が死亡しています。
また、OSASでは眠気のために交通事故や転落事故に巻き込まれやすことも統計的に証明されています。更に、全ての患者について15〜20年追跡調査を行ったところ、末治療OSASの生存率は約60%でしかありませんでした。
 このように命を脅かす閉鎖性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、気道を狭小化させる要因(例えば肥満、扁桃肥大、巨大舌など)があると起きやすくなります。
また、骨格的に下顎骨が小さく後方位置している顎変形症(小下顎症)は、下顎骨に付着する舌も後方に位置することになり、結果として気道を狭めますから当然、閉鎖性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)を引き起こす要因となります。
 閉鎖性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、軽度であれば就寝時に口腔内装具(oralappliance:OA)を装着して下顎骨を前方に誘導することで気道を拡張させ治療します。
重度の場合には就寝時に鼻マスクを装着し、ここから気道に陽圧をかけ、吸気時の気道狭窄・閉塞を防止する経鼻持続陽庄呼吸(nasalcontinuouspositiveairpres−sure:nCPAP)が行われています。
しかし、いずれも対症療法で根本的な問題を解決する訳ではありませんから、一生、就寝時に口腔内装具やnCPAPの装着が必要になります。
 これに対し外科的矯正治療は、原因である下顎の後退を改善しますから、治療後には装具の装着等を行う必要が無くなり、閉鎖性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)を改善する事が可能となります。(下記図参照)


外科的矯正治療で下顎骨が前方に移動し気道(黄色矢印)が拡大しているのが分かります。
(左:術前/右:術後)